── 営業トークに流されず、自分で判断できるようになる本
目次
1. はじめに:なぜ住宅会社選びで迷うのか?
家づくりの相談で、よくこんなお話を聞きます。
- 「住宅展示場を回れば回るほど分からなくなってきました…」
- 「どの営業さんも良いことを言うから、違いが分からないです」
- 「このままだと、勢いで決めてしまいそうで不安です」
正直に言うと、
住宅会社選びは、初心者の方が一番つまずきやすいポイントです。
理由はシンプルで、
- 会社ごとに得意・不得意が大きく違う
- 話してくれる情報の“角度”がバラバラ
- 営業トークは基本的に「自社を良く見せる」ようにできている
からです。
でも、ここでお伝えしたいのは、
「特別なセンスがないと、良い会社は選べない」
という話ではなく、
「見るポイント」と「聞き方」が分かれば、
初めてでも、ちゃんと自分たちで判断できるようになる
ということです。
この記事では、
- ハウスメーカー・工務店・設計事務所の違い
- 性能・間取り・お金・営業スタンスの見極め方
- よくある営業トークの“読み解き方”
- 最終的に「ここなら任せて大丈夫」と思える条件
まで、ひとつひとつ整理していきます。
「なんとなくの印象で決める」のではなく、
「自分たちの言葉で整理して、納得して決める」ためのガイドとして、
ゆっくり読み進めていただけたらと思います。
2. まず押さえたい「住宅会社のタイプ」ざっくり整理
最初に、住宅会社のタイプを
“専門用語抜き”でざっくり整理しておきましょう。
① ハウスメーカー(大手)
テレビCMや展示場に出ているような、全国規模の会社です。
メリット
- 商品や仕様が標準化されていて、一定以上の品質になりやすい
- 保証・アフターサービスの体制が整っていることが多い
- 実例やデータが豊富で、イメージしやすい
注意したい点
- 価格は比較的高めになりやすい
- 自由度は、会社によって差がある(間取り制限など)
- 「担当者の力量」で満足度が変わることも
② 中堅ビルダー
地域〜広域で展開している、やや大きめの会社です。
- ローコスト寄りの会社
- 規格住宅が得意な会社 など、色々あります。
メリット
- 大手より価格を抑えやすい
- 地域性もある程度分かっている
- 商品のわかりやすさを重視しているところも多い
注意したい点
- 性能・仕様のレベル感が会社ごとにかなり違う
- 標準仕様をよく確認しないと「思ったよりオプションだらけ」になることも
③ 地元工務店
地域密着で家づくりをしている会社です。規模は様々。
メリット
- 地元の気候・土地・職人さん事情をよく知っている
- 融通が利きやすく、柔軟な対応が期待できる
- 価格と性能のバランスが良い会社も多い
注意したい点
- 会社ごとの差がとても大きい(性能・設計力・現場管理など)
- 担当者に依存する部分もあるので、見極めが大事
④ 設計事務所+工務店(分離型)
設計事務所が設計を行い、工務店が施工をする形です。
メリット
- 間取りやデザインにこだわった提案が得意
- 細かい要望を聞いてくれやすい
- 「自分たちらしさ」を出したい方には向きやすい
注意したい点
- 打合せに時間と手間がかかりやすい
- トータルのコストが上がる場合もある
- 「誰がどこまで責任を持つか」をはっきりさせる必要がある
ここで大事なのは、
「どれが正解か」を決めることではなく、
「自分たちの価値観に合うタイプはどれか」を考えることです。
- 安心感や保証を重視するのか
- 価格重視なのか
- 自由度・デザイン性を重視するのか
ご夫婦で「優先したいポイント」を話し合うことが、
この後の判断をラクにしてくれます。
3. 見極めポイント①:性能の“伝え方”と“数字”
1本目・2本目の記事ともつながる部分です。
住宅会社を見極めるとき、
「性能をどのように説明してくれるか」 は、とても大きなポイントです。
押さえておきたい3つの数字
難しい話は抜きにして、
まずはこの3つだけ押さえておけば十分です。
- Ua値(ユーエーち):家全体の「断熱性能」を表す数字(小さいほど熱が逃げにくい)
- C値(シーち):家の「すきまの量」を表す数字(小さいほどすきまが少ない)
- 耐震等級:地震に対する強さの等級(1〜3。3が一番高い)
「高性能です」だけで終わらせない
説明を聞いたときに、
- 「高気密・高断熱です」
- 「地震に強い家です」
という“言葉だけ”で終わっていないかをチェックしてみてください。
✔ やさしく聞いてみたい質問例
「このお家だと、Ua値はどれくらいになりそうですか?」
「C値は測定されていますか? 過去の実績値ってありますか?」
「耐震等級はいくつを標準にされているんでしょうか?」
ここで大事なのは、
専門家のようにツッコむことではなく「数字の考え方」を聞くことです。
- 数字を出してくれるかどうか
- その数字の意味を、こちらに分かるように説明してくれるか
- 「なぜその性能にしているのか」の理由を話してくれるか
このあたりから、その会社の“家づくりの考え方”が見えてきます。
「数字は苦手で…」という方も、
**「数字で説明してくれる会社かどうか」**だけでも意識してみてくださいね。
4. 見極めポイント②:間取り提案の“質”
2本目の「間取りの良し悪し」の話とも直結する部分です。
あなたの話を、どれだけ聞いてくれるか
間取りの提案を受けるとき、
最初のヒアリングはとても大事です。
- 家族構成
- 共働きかどうか
- 在宅ワークの有無
- 子どもの年齢
- 将来の予定(もう1人欲しいか、親との同居の可能性など)
こうした話をどれだけじっくり聞いてくれるかを見てみましょう。
「得意パターンに当てはめているだけ」になっていないか
会社によっては、
自社の“得意パターン”を当てはめるだけの提案になることもあります。
- どの家も、よく似た間取りになる
- 回遊動線・吹き抜け・大きなファミクロなど“トレンド要素”が一通り入っている
- 「なぜこの配置にしたのか」の説明が弱い
こう感じたら、次のように聞いてみてください。
「この間取りは、うちの家族構成や働き方を踏まえると、
特にどんな点が合っていると考えて提案してくださったんでしょうか?」
ここで、
- 「どのご家庭にもおすすめの間取りです」だけで終わるのか
- ちゃんとあなたの暮らしに寄せた説明が出てくるのか
が、一つの見極めポイントになります。
デメリットや注意点も一緒に話してくれるか
完璧な間取りは存在しません。
必ず、何かを優先すれば何かが犠牲になります。
だからこそ、
「デメリットも含めて話してくれるか」は、信頼の目安になります。
✔ こんな質問もおすすめです
「このプランの弱点を、あえて挙げるとしたらどんなところですか?」
「間取りをこの形にしたことで、気をつけたほうがいい点はありますか?」
ここで、
- きちんと弱点を共有してくれる
- そのうえで、どうカバーするかを説明してくれる
ような営業さん・設計士であれば、
安心して一緒に家づくりが進めやすくなります。
5. 見極めポイント③:見積書とお金の話
多くのご夫婦が一番不安に感じる部分です。
見積書でよくある「抜け・ズレ」
見積書には、以下のような項目が「初期見積もりに含まれていない」ケースがあります。
- 外構工事(駐車場・アプローチ・フェンスなど)
- カーテン・照明器具
- 地盤改良費
- 登記費用・火災保険・ローン諸費用 など
見積もりをもらったら、
次のように確認してみてください。
「この見積もりの中に、
・外構工事
・カーテン・照明
・諸費用
はどこまで含まれていますか?」
「本体価格」だけで判断しない
広告やチラシに書かれている「本体価格」は、
あくまで“家の一部”の金額であることがほとんどです。
- 付帯工事
- 外構工事
- 諸費用
を足していくと、
トータルでは本体価格の1.2〜1.5倍くらいになることもよくあります。
「このプランで、土地・建物・諸費用・外構を全部含めた
概算の総額はいくらぐらいになりますか?」
と“総額ベース”で聞いてみると、
他社との比較もしやすくなります。
値引きトークとの付き合い方
よくあるフレーズとしては、
- 「今月中にご契約いただければ、この金額から○○万円お値引きします」
- 「キャンペーン期間中なので、オプションをサービスします」
などがあります。
ここで大事なのは、
- 急いで決める必要が本当にあるのか
- もともとの見積もりが適正かどうか
を冷静に考えることです。
✔ 穏やかな聞き返し方
「この値引きは、もし来月になった場合はまったく受けられない内容でしょうか?
私たちとしては、焦らず比較して決めたい気持ちもあって…」
と素直に伝えてみてください。
ここで、
- 無理に契約を迫らず、比較検討の時間を尊重してくれる会社
- 「今日決めないともう無理です」と強く迫ってくる会社
で、見え方が大きく変わってきます。
6. 見極めポイント④:営業さんとの相性と“スタンス”
会社選びの話をするとき、
「人で決めるのは危険」と言われることがあります。
たしかに、「担当者が良い人そうだから」で即決してしまうのは、少し心配です。
一方で、「人」を軽視するのも、同じくらい危険です。
見ておきたい営業さんのポイント
- こちらの話を、途中で遮らず最後まで聞いてくれるか
- デメリットやリスクも正直に話してくれるか
- 分からないことを「分からない」と言えるか
- 契約を急かしすぎないか
こんな問いかけもしてみてください
「もし自分の家族が家を建てるとしたら、
この仕様やプランをすすめますか?」
この問いに対して、
- はぐらかさず、理由も含めて答えてくれるか
- 「ここは良いけれど、ここは好みが分かれるかもしれません」と冷静に話してくれるか
は、ひとつの判断材料になります。
担当者が変わったときの体制も聞いておく
長い家づくりの間には、
人事異動や退職などで担当者が変わることもあります。
「もし担当さんが変わる場合は、どんな引き継ぎの仕組みになっていますか?」
と聞いておくと、
- 個人まかせの会社なのか
- チームで情報共有している会社なのか
が見えてきます。
7. 見極めポイント⑤:会社の“現場力”とアフター
家は「図面」と「パンフレット」だけで建つわけではありません。
最後は、現場で作る大工さん・職人さんの力がとても重要です。
建築中の現場を見せてもらえるか
可能であれば、
- 工事中の現場見学
- すでに住んでいるOBさんの家見学
をお願いしてみてください。
✔ 現場で見るポイント(難しい知識は不要です)
- 現場がある程度片づいているか(道具や材料が散乱していないか)
- ゴミが山積みになっていないか
- 近隣への配慮(挨拶文・清掃など)がされているか
「きれいな現場=絶対に良い家」とまでは言いませんが、
丁寧な現場は、丁寧な家づくりにつながりやすいのは事実です。
アフターサービスの仕組み
- 定期点検の頻度(例:半年・1年・2年・5年・10年など)
- その点検を誰が行うのか(自社・第三者)
- 不具合が出たときの窓口(担当営業・カスタマーセンターなど)
も、事前に確認しておきましょう。
「完成した家」だけでなく、
「建てているとき」と「建てた後」まで含めて見ていくと、
会社の本当の姿が見えやすくなります。
8. よくある営業トークと、その“読み解き方”
ここからは、よく耳にする営業トークを
少しだけ「翻訳」してみます。
①「今だけのキャンペーンです」
本当に期間限定のこともありますし、
「決断を早めてもらうため」のメッセージであることもあります。
聞いておきたいこと
「このキャンペーンは、具体的にはいつまでの申し込みが対象でしょうか?」
「内容は、どのタイミングで契約すれば適用になりますか?」
ここで、冷静に条件を確認したうえで、
- それでも今決める価値があるのか
- 焦って決めるほどのものではないのか
を、ご夫婦で話し合ってみてください。
②「このプラン、かなり人気なんですよ」
多くの方に選ばれている間取り・仕様であるという意味かもしれませんが、
「あなたの家族に合っているか」は別の話です。
おすすめの聞き返し
「人気なのは心強いですね。
うちの家族構成や働き方を踏まえると、
特にどんな点が合っていると考えて提案してくださったんでしょうか?」
“人気”という言葉に安心しつつも、
自分たちにとってのメリットを確認するイメージです。
③「この仕様で十分ですよ(グレードアップ不要です)」
良心的な提案のこともありますし、
逆にコストを抑えるためのトークのこともあります。
「標準仕様でも問題ない」という説明だけで終わらず、
「グレードを上げた場合の違い」も一緒に聞いてみてください。
「標準仕様と、ワンランク上げた場合で、
性能やメンテナンス性にどれくらい差が出ますか?」
という聞き方をすると、
選択の判断材料が増えていきます。
④「うちで建てるなら、土地探しもまとめてやりますよ」
土地探しをサポートしてもらえるのは、とても心強いです。
ただし、
- 自社で建てる前提が強くなる
- 他社比較をしづらい雰囲気になる
こともあります。
「土地探しからお願いする場合でも、
他社さんと比較検討しながら進めさせていただいても大丈夫でしょうか?」
と、最初に聞いておくと安心です。
9. 住宅会社を比較するときの「進め方」
「何社くらい見ればいいですか?」という質問もよくいただきます。
2〜3社が現実的なライン
- 1社だけ:比較軸がないので、良し悪しが分かりにくい
- 5〜6社以上:情報が多すぎて、結局分からなくなりがち
を考えると、
2〜3社程度をしっかり比較するのが現実的です。
最初に「比較の軸」を決めておく
比較するときの軸は、例えばこんなイメージです。
- 性能(Ua値・C値・耐震等級など)
- 間取り提案(暮らしに合っているか・説明の丁寧さ)
- 価格(総額で見たときのバランス)
- 担当者との相性(スタンス・誠実さ)
- 会社の安心感(規模・アフター体制・実績)
紙やエクセルで、簡単な表にしてみるのもおすすめです。
会社名を横軸、
上の項目を縦軸に並べて、
それぞれ「◎/○/△」を付けていくイメージです。
「なんとなくの印象」から一歩進んで、
夫婦で同じ表を見ながら話せる状態になると、
決断がぐっとラクになります。
10. 「この会社なら任せて大丈夫」と判断するためのチェックリスト
ここからは、
「ここまで満たせていれば、大きくは外さない」と思える
“合格ライン”をお伝えします。
✔ 性能面
- Ua値・C値・耐震等級について、きちんと説明してくれる
- 数字の根拠(計算書・実測値など)を提示してくれる
- 「なぜその性能レベルにしているか」の考え方が筋が通っている
✔ 間取り・提案力
- 家族構成や暮らし方を、時間をかけて聞いてくれた
- 間取りのメリットだけでなく、デメリットも話してくれる
- 修正依頼に対して、きちんと理由と代案を出してくれる
✔ お金・見積もり
- 見積書の内容が分かりやすく説明されている
- 外構・カーテン・諸費用などの扱いを、最初に共有してくれる
- 値引きの説明が、過度に「今日決めてください」になっていない
✔ 営業・会社のスタンス
- 質問に対して、誠実に答えてくれる
- 不利になりそうな情報も隠さず説明してくれる
- 担当者が変わったときの体制も含めて、組織的に動いている
もちろん、
これをすべて完璧に満たす会社はほとんどありません。
でも、
「8割くらいは納得している」
「残りの2割も、許容できる理由がある」
という状態まで整理できていれば、
十分「任せて大丈夫なライン」にいると考えていいと思います。
11. ケーススタディ:A社・B社で迷ったときの考え方
よくある迷い方の一例です。
- A社:大手ハウスメーカー
- 価格は高め
- 保証やブランドの安心感がある
- モデルハウスも魅力的
- B社:地元工務店
- 価格は抑えめ
- 担当者が親身で、話をよく聞いてくれる
- 性能も数字で示してくれる
どちらも魅力があって決めきれない…
そんなときは、次の3つの問いを使ってみてください。
問い①:10年後の自分に聞いてみる
「10年後の自分が振り返ったとき、
どちらを選んでいたら“納得できている”と思うか?」
- 「あのとき、安心感を優先してよかった」
- 「あのとき、価格と中身のバランスを優先してよかった」
どちらの言葉が、よりしっくり来るかを
ご夫婦で話してみてください。
問い②:後悔しないために、一番大事にしたい軸は?
- 性能
- 間取り
- 担当者との相性
- 価格
- 会社の規模・ブランド
この中から、
「ここだけは妥協したくない」
という軸をひとつ決めてみるのも、判断の助けになります。
問い③:不安が大きいのはどちらか?
- A社に対して不安なポイントは?
- B社に対して不安なポイントは?
を書き出してみて、
「その不安は、話を聞けば解消できそうか?」
「それとも、会社のスタンスそのものに関わる不安か?」
を整理してみてください。
選ぶときの基準は、
「不安がゼロの会社」ではなく、
「不安があっても、きちんと話し合って解決していけそうな会社」
かどうかです。
12. まとめ:会社選びは「正解探し」ではなく「納得探し」
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
最後に、お伝えしたいことは一つです。
住宅会社選びに「絶対の正解」はありません。
- 大手だから安心、でもない
- 工務店だからダメ、でもない
- 〇〇工法だから必ず正解、でもない
どの会社にも、長所と短所があります。
だからこそ大事なのは、
- 情報を集めて
- 自分たちの優先順位を整理して
- 気になるところは遠慮なく質問して
「それでも、この会社なら任せて大丈夫」
と思えるかどうかです。
この記事でお伝えしてきた、
- 住宅会社のタイプの違い
- 性能・間取り・お金の見極め方
- 営業トークの読み解き方
- 最低限クリアしてほしいチェックポイント
が、あなたとご家族の
「納得できる選択」の支えになれば、とてもうれしく思います。
おわりに:迷っているあなたへ
今この瞬間も、
- 「本当にこの会社でいいのかな…」
- 「他社も見たほうがいいのかな…」
と、心のどこかで悩んでいるかもしれません。
その迷いは、
ご家族のことを真剣に考えているからこそ生まれるものです。
決して「優柔不断だから」ではありません。
どうか、その気持ちを大事にしながら、
- 質問したいことを紙に書き出す
- 2〜3社を同じ基準で比べてみる
- ご夫婦で「何を一番大事にしたいか」を話し合う
そんな一歩を、少しずつ進めてみてください。
家づくりは、「勢いで決めておしまい」ではなく、
**「納得して進めれば進めるほど、完成が楽しみになるプロセス」**です。
この記事が、
あなたの家づくりの“伴走役”のひとつになれていたら幸いです。

